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春を越える_____鳴神山の春2014年(前篇)


春を登る(前篇)

冬の鳴神山は空が近い。葉が落ちきった山中では空色の光を供にして歩くことが出来た。近年稀にみる膨大な積雪はまるで雲海を歩いている気がした。しかし春夏秋に比べれば冬はやはり侘しい。それでも冬の鳴神山を歩いてきた。華やかな春の訪れに立ち会いたい、冬から春への移り変わりを体感したい。そう思って歩いてきた。

3月も終わろうとするのに雪はなかなか消えなかった。春の兆しが見つからない。雪が深すぎて、花芽は打撃を受けてしまったのだろうか。日差しは徐々に眩しく明るくなってはきている。消えない残雪と深い落ち葉にだんだん不安が募ってくる。
 
落ち葉の中に一つ二つ、緑色の葉を見つけた。カタクリの葉だ。地面にへばりついた葉と葉の間から花茎がすっと伸びてきて、薄紫色の花芽が垂れてきた。春の日差しを浴びたカタクリの花芽は金色に輝き、2枚の葉は鳥の羽根のように見えた。今まさに春に向かって羽ばたこうとしているのだ。鳴神山に春が来た。私は俄然として嬉しくなった。
 
カタクリの出現と同じ時期に、小さな小さな花達が覚醒し始めた。沢沿いの岩を白玉のような輝きで埋め尽くすハナネコノメ、まだまだ冬模様の登山道沿いに4枚の白い花弁を開くユリワサビ。こんな小さな花達があの大雪に負けずに咲いてくれたのだ。まもなくしてカタクリが開花した。落ち葉をかいくぐって薄紫色の花弁を思い切り反らしている。色が戻ってきた。妖艶な薄紫色の花を見てそう思わずにはいられない。そしてニリンソウがあちらこちらに咲き始めた。どんなに小さくても、山の生命は自分の時間を忘れないようだ。

ヤマブキが登山道を鮮やかに照らし始めた頃、山頂のアカヤシオの蕾が赤く熟れてきた。小さな花たちが目覚めてはいたが、山の全体的な印象はまだ冬と変わらない枯れ山だった。岩色の山頂にアカヤシオが開花した。空と岩の間に目も覚めるような春の色の出現だった。ピンク色の羽衣のような花弁は地面に直立するように枝先についていた。春の訪れを知らせに来た妖精が枝に生け捕りされ、空を舞うことを強要されたかのように。

山頂のアカヤシオの開花と同じ頃、麓から新緑の風が吹き上げ、新緑の眩い光が山を包み始めた。空色の胸に新緑が首飾りを垂らす。翠玉の首飾りは何重にも巻かれ空は緑で埋め尽くされていく。身近だった空が新緑によってどんどん遠ざかる。新緑によるアーケードはめまいを覚えるほどの眩さだった。ぐんぐん登る新緑前線は風恋岩(第2石門)に達した。風恋岩から展開する広葉樹の森は翠玉の首飾りでキラキラと輝いている。足元にはワチガイソウやミツバツチグリといった花が続々と生まれている。上から下から私は春に包まれた。この上ない幸福だった。

アカヤシオはピークを迎えた。アカヤシオに彩られた桐生岳は春の淡い青空に映えた。桐生岳から眺める仁田山岳はピンク色に染まり、仁田山岳山頂ではアカヤシオの屋根の下で過ごすことが出来た。仁田山岳から椚田峠への道はアカヤシオのアーケードとなっていた。まさに桃源郷だった。



(2014年6月記)


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鳴神山愛する会

Author:鳴神山愛する会
ようこそ鳴神山へ!
主に季節の見どころ(花メイン)と登山道整備の記録を綴っています。
なにぶん素人ゆえ、花の同定には間違いが多いですがご了承下さい。
行政でもなく、営利目的でもなく、ひたすらに山を愛する山男達の登山道整備を記録しています。
何気なく歩いている山にどれだけ多くの手、愛情が加えられているかを
是非知っていただきたいと思っています。

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