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山に咲く

花を見るには速くてもコースタイムだと思っている。
コースタイムより速いと花は目に入ってこない。
車と同じで速ければ速いほど視界は狭まるのだ。
鳴神山駒形登山道では速くて1時間半で歩く。
私を知っている人は、私をさぞ鈍足だと思うだろう。


鳴神山を歩いて約6年。
ほとんどの花を知り尽くした私が今でも鳴神山を歩いているのは
花の生存確認のためだ。
あの花は今年も咲いただろうか、その確認のために歩いているといっても過言ではない。
近年は花が減る、花が滅することばかりに目がいってしまい、どちらかというと悲しい思いをする方が多い。
それでも、花を見つければ私は嬉しい。
花は山の笑顔だ。
山の微笑みに気付かずして、山を知ったとは言えまい。
今年もおまえに会えて良かった。
咲いてくれてありがとう。生きてくれてありがとう。
おまえがそこにいてくれるだけで嬉しいんだよ。
そう語りかけながら歩く。
昆虫に向かって必死にアピールしている花にとっては、
生産活動に何の関与もしない人間が自分の存在に一喜一憂していることをさぞ不思議に思うことだろう。
でもいいのだ。
私は蜜を吸わない昆虫なのだから。


8月22日3時45分。
平ヶ岳登山口を出発する。
数台の車が準備を始めていた中、私は一番に出発した。
頭にはヘッドライト、手にはハンドライト。
満天の星空の中、暗い登山道を私は歩き出した。
11時間とも12時間ともいわれるコースタイム。
さて、何時に帰ってこれるか。
始めは緩やかだったがあっという間に急登となった。
下調べで序盤から急登だと分かっていたが、多少高をくくっていた。
その上長い。
約2時間急登は続いた。
下台倉山辺りから左手に燧ケ岳がよく見えるようになった。
0822燧ケ岳

もちろん平ヶ岳の山容は全く見えてこない。
アップダウンの続くゆるやかな道をしばらく歩く。
ミヤマママコナ、リョウブ、ホツツジ、アキノキリンソウ、ツルリンドウ、アオヤギソウ、カニコウモリなどがあったが、
もう夏の花のピークは過ぎて種類が少なかった。
ほとんど今年見たことのある花ばかりだったが、
ミヤマママコナの白花を見つけた。
これは珍しいと思う。少なくとも私は初めて見た。
0822ミヤマママコナ

出来るだけ花に寄り道せず、先を急ぐ。
白沢清水を過ぎ、しばらくすると平ヶ岳が見えてきた。
0822平ヶ岳全容
歩き出して約4時間半にして、やっと自分の目指す山容が見えてきたのだ。
平ヶ岳はその名の通りなだらかな山容だった。
私は感動で身が震えた。
来て良かったとしみじみ思った。
百名山日帰り最難関と言われる平ヶ岳登頂に不安がないはずがない。
どうしてこんな恐ろしい挑戦をするのだと不安と後悔を抱えながら歩き出したが、
山頂が見えたときそれまでの負の感情は一掃された。
神のまします座を見て、私の足取りに力がみなぎった。
0822平ヶ岳全容2
池ノ岳への急登が始まる頃、平ヶ岳の全貌が見えてきた。
美しい。
池ノ岳への急登は序盤同様に厳しかったが、私は知っている。
歩き続けれけば、ゴールは近づくことを。
私の出来ることは歩くことしかない。
ゆっくりでも確実に歩を重ねてゆく。
オヤマリンドウ、ミヤマアキノキリンソウ、イワショウブ、ミヤマコゴメグサなどが登山道脇に咲いている。
手早く写真を撮りながら歩き続ける。
歩き出して約5時間で池ノ岳に到着。
0822池
仰天するほどの楽園が待ち構えていた。
牧歌的な、まさに神が戯れているような様相だった。

姫ノ池と湿原の美しさに感動しながら平ヶ岳へ向かった。

0822平ヶ岳への道2
0822平ヶ岳への道

枯れたキンコウカが湿原を乾いた金色に染めている。
今でも十分美しいが、花のピークの頃ならさぞ美しいことだろう。


9時20分登頂。
0822山頂

周辺を少し散策した後、どっかり腰を下ろして休憩した。
仰向けに寝転び、ストレッチをする。

0822山頂からの空

空が近い。
天国が近い。

私は初めて平ヶ岳の山容が見えたときの感動、全貌が見えたときの感動、
姫ノ池を目の当たりにしたときの感動をしみじみと思い出していた。
山でしか味わえないこの感動を知ってしまったら、また来たいと思わずにいられない。

それにしても、山ではなぜ神を感じるのだろう。
無神論者の私が山では思わず「神」という言葉を使ってしまうのだ。
天国に近いからだろうか。
私にとって、神とは逝ってしまった、私を愛してくれた人達を指すのかもしれない。
それなら合点がいく。
私の山歩きの目的の一つは天国にいる人達に会いに行くことでもあるのだから。


誰もいない山頂で私は空を見上げた。
きっと、あの人達は私の生存を確認してくれるだろう。
おまえが元気に生きてくれるだけで嬉しいんだよ、
そこにいてくれるだけでいいんだよと
そう思ってくれた人達はきっと。


空を眺めながら、誰かにとって私も山に咲く花なのだと思った。
やっぱり山に来なくては。
来続けなくては。
山に咲く花に向ける温かさと優しさを湛えた眼差しと同様の、
懐かしい眼差しに再会するために。






0345  駐車場発
0920  山頂着
0945  山頂発
1410  駐車場着





榛名山~百花繚乱

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尾瀬沼便り~狂喜蘭舞

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谷川連峰トレラン禁止について思うこと。

登山口の看板その1。
 一輪咲いて 一輪咲いて
その時を待って
明日また咲くために
守って下さい
花 平標山 

0605平標1

看板その2。
ランナーの方
谷川連峰一帯は特別保護地域に指定されています!
植物・昆虫の保護、登山道整備、
登山者の安全確保などの為
走ることは禁止とします!
 
 


0605平標3

山中での看板。
一部抜粋。
ランナーは風当たりを強く受ける立場であることを留意して
ルール、マナーの向上に努めましょう! 

0605平標2



平標は6月のハクサンイチゲ、ハクサンコザクラ、ミヤマキンバイの時期によく訪れる山です。
今回で4回目となります。
今回は登山口の看板に目が留まりました。
トレラン禁止の告知、これは去年あったかどうか覚えていません。
(3枚目の看板は古いものだと思われます。
現在は2枚目の看板にあるようにトレラン禁止です)

私は感動しました。
1枚目の看板を見て下さい。
この山を愛する人達はこういう気持ちで山を見守っているのです。
この山に限らず、山の花を愛する者は皆こんな気持ちではないのでしょうか。

私はトレランが嫌いです。
本人は「自然の中で~」とか、「豊かな自然に触れて~」とかのたまいますが、
あなたたちの言う自然って何ですか?
自然とは豊かな植生のことを指すのではないのですか?
走る速さで、足元の小さな命を見ることが出来るのですか?
踏みつぶしていませんか?
近年の山の天敵は鹿でしょうが(それでも鹿は山に棲む者)、
人間だって山にとっては部外者であり害悪なんですよ。
だからこそ、出来るだけルールを守って山にでかけるんです。

人間が山を歩くことさえ、山には負担かもしれないのに、
周囲に配慮が出来ない人間が山を走ったらどうなるんですか?
何も言わずに後ろから抜いていくのもマナー違反だろうよ?

本当にやめてほしい。
少なくとも花の多い山には来るな。

その点、谷川連峰を守る方の態度は素晴らしい。
谷川では数年前トレランの大会予定があったらしいですが、
各団体・個人から厳しい意見が出され中止となったそうです。

そのときの資料の一部伐採です。
第一に、多数のランナーが、急峻な狭い登山道や木道で、タイ ムを競い合ってランニングで駆け抜ける行為は、登山道を踏み荒らし、貴重な高山植物をも踏み荒らす行為につながる。競技ではストックの使用を許可している が狭い登山道でのストック使用は登山道の破壊につながり、湿地帯などでストッ クを使用すると湿原を掘り起こし、貴重な山岳自然を壊す行為となる。 
第二に、コースには非常に狭くて急峻な登山道もあり、参加者も危険にさらされる。登山者は狭い場所ではお互いに譲り合って安全に歩くことを心がけているが、 多くのランナーがタイムを競い合って駆け抜けると一般登山者をも危険にまきこむことになり、安全上からも問題がある。 
第三に、トレイルランのメインコースは、急峻な登りで高山植物が咲き乱れる高層湿原、多彩な山岳要素を内包した貴重な山域であり、登山愛好家にとって人気 の高いコース、ここを多数のランナーが登山者を押しのけて駆け抜ける場にすることはあってはならないと考える。 
第四に、計画では、「ロングトレイルでエコロジー」と謳い、参加費の一部を自然保護活動に振り分けることを表明しているが、エコロジーとは生物を身近で観 察し、自然環境を守ることが大事であることを学び、そうすることによって自然環境の保護や山岳自然と共存していくことの必要性を学ぶものであり、谷川連峰 ロングトレイルラン計画は、エコロジーに背反するものである。



本当に感動しました。
是非、鳴神山でもトレランは禁止にしてほしい。
申し訳ないが、山を走る人は風当たりを強く受ける立場であることを留意して下さい。
尚、私が見かけたら注意します。

権利云々の問題ではない。
今だけ良ければいいという考えが、長い時間をかけて培われてきた自然を破壊し、
利己的な態度が未来へ残るべき自然を破壊する。
自然云々を語るなら、現世的かつ利己的な行動は慎むべきだ。
自然に触れれば触れるほど、謙虚になっていくのが健全な感受性だ。




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